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DMBOK2 を読み進めていくシリーズ。
今回は第15章「データマネジメント成熟度アセスメント」について。
データマネジメントの導入において重要な役割を果たしそうなので早めに確認しておきたかった。

以降、特に注釈のない引用は DMBOK2 第15章からの引用とする。

データマネジメント成熟度アセスメントとは

データマネジメント成熟度アセスメント (DMMA: Data Management Maturity Assessment) はその名の通り、組織のデータマネジメントのレベルの評価に基づくプロセス改善の取り組みのこと。
能力成熟度アセスメント (CMA: Capability Maturity Assessment) というものがあり、それのデータマネジメント版が DMMA。

CMA では

成熟度モデルは進化の観点から定義され、それにはプロセスの特性を表すレベルが使用される。組織がプロセスの特性を理解すると、組織は成熟度を測り、その能力を向上させるための計画を立てることができる。(中略) 新しいレベルに上がる度にプロセスの実行はより一貫性を増し、予測可能な状態となり、信頼性が高くなる。

レベルは通常0~5の6段階で表される。
DMMA は

全体的なデータマネジメントを評価するために使用したり、単一の知識領域や、単一のプロセスに焦点を当てて使用したりできる。どのような点に焦点を当てたとしても、DMMA はデータマネジメント業務の健全性と有効性について、業務と IT の視点のギャップを埋めるために役立つ。

組織が DMMA を実施する理由は、規制への対応、データガバナンス、プロセス改善、etc.
DMMA の第一のゴールはデータマネジメント活動の現状を評価することであり、それにより改善計画を立てることができるようになる。

アセスメントレベル

以下はアセスメントレベルの概要。
データマネジメントの各知識領域 (ex. データガバナンス、メタデータ管理、etc.) ごとにレベルが評価される。

  • level 0: 能力が欠如した状態
    • データマネジメントの取り組みがない
  • level 1: 初期/場当たり的な状態
    • 限られたツールセットを用いた一般的なデータマネジメント
    • ガバナンスは低レベル
    • データ処理は一部の専門家に依存し、役割や責任は部門別に定義されている
  • level 2: 反復可能な状態
    • 組織は一元化された共通ツールを使い始める
    • 役割は明確化されており、一部の専門家のみに依存しない
  • level 3: 定義された状態
    • 拡張可能なプロセスの導入と制度化
    • 組織全体である程度統制されたデータの複製
    • データ品質全体の総体的な向上
    • 組織的なポリシー定義と統制
  • level 4: 管理された状態
    • 新しいプロジェクトやタスクから得られる結果が予測され、リスクの管理が始まる
    • データマネジメントに成果に対する評価尺度が含まれる
    • データマネジメント用の標準ツールが集中管理計画とガバナンス機能に組み合わされている
  • level 5: 最適化された状態
    • 活動の成果は十分予測可能に
    • 組織は継続的な改善に重点を置く
    • 十分理解された評価尺度を使ってデータ品質とプロセスが管理・測定される

次のように各知識領域ごとに可視化することができる。
現状ランクと求められるランクの乖離が大きいところが組織にとってのリスクとなる。

DMBOK2 図105 データマネジメント成熟度アセスメントを視覚化した例

DMBOK2 図105 データマネジメント成熟度アセスメントを視覚化した例

既存のフレームワーク

DMMA のフレームワークとして5つのフレームワークが挙げられている。
多くのベンダーが独自のモデルを開発しているため、ベンダーを選ぶ前、または独自のフレームワークを開発する前に複数のフレームワークを比較検討する必要がある。

※DMBOK2 の出版が2018年で情報が古くなっているものもあり、リンク先が公式ではないものも含む。

データマネジメント成熟度アセスメントの実施

次のサイクルで実施する。

  1. アセスメントアクティビティの計画
    • 経営幹部や業務部門が理解できるようアセスメントの目的を形式化する
    • 組織全体をスコープとするのは難しいこともあるため、最初のアセスメントでは単一の業務領域などスコープをしぼる
    • 情報収集のアプローチ (ワークショップ、インタビュー、アンケート、成果物レビューなど) を定義する
  2. 成熟度アセスメントを実行する
    • 情報収集の実施
    • 評価付を行い、合意された見解に達する
  3. 評価結果を吟味する
    • 目標とする次の状態にいたるステップを明確化
    • アセスメント結果を報告
  4. 改善を達成するためのターゲットプログラムを作成する
    • 特定のデータマネジメント機能を改善するためのアクションを特定
    • そのスケジュール、および実施された場合に期待される DMMA の改善を示す
  5. 成熟度の再評価
    • 定期的に再評価を行うべき
    • 定期的に改善が測定できると組織全体のコミットメントと熱意が維持される

まとめ

DMMA はデータマネジメントの導入時に政治的な意味でも重要になりそうだと思った。
「データマネジメント?なにそれおいしいの?」というレベルの経営層に現実を見せて動機づけにできそう。
まあデータマネジメントにちゃんと取り組むならどっちにしろ最初にやるべき。

関係ないけどかなーり昔に働いていた職場で上司が「CMMI やることになった」とバタバタしていたのを思い出した。